2025年8月18日 更新 2025年8月24日
はじめに:中小企業が直面する内部不正の脅威と対策の必要性
信頼を裏切る内部不正の現実
内部不正は、企業に多大な損害をもたらすだけでなく、社会的な信用失墜にもつながる深刻な問題です。特に中小企業においては、限られたリソースの中で効果的な対策を講じることが重要となります。内部不正は、従業員による情報持ち出し、金銭的横領、業務上の不正行為、ハラスメント行為、業務中の私的利用など、多岐にわたります。
放置すれば会社が倒産することも?内部不正の深刻な影響
内部不正を放置すると、企業の競争力低下、賠償責任の発生、顧客離れ、そして最悪の場合には倒産に追い込まれる可能性もあります。例えば、顧客情報の漏洩は企業の信頼を著しく損ない、事業継続を困難にする恐れがあります。
本記事で得られること:内部不正対策の全体像
本記事では、中小企業が内部不正に対してどのように対策を講じるべきか、その全体像を解説します。内部不正の種類と見抜き方から、予防策、早期発見の仕組み、そして実際に不正が発覚した際の調査と対応まで、具体的な方法を網羅的にご紹介します。
内部不正の種類と見抜き方・兆候
内部不正の主な種類を知る
内部不正には様々な種類があり、それぞれ異なる特徴と影響を持っています。
情報持ち出し・漏洩:顧客情報、営業秘密、技術情報など
顧客情報、営業秘密、技術情報といった企業にとって重要な情報が、従業員によって不正に持ち出されたり、外部に漏洩したりするケースです。これは、企業の競争力を著しく低下させ、損害賠償請求に発展する可能性もあります。
金銭的横領・経費不正:架空請求、着服、キックバックなど
従業員が会社の資金を不正に私的利用する行為で、架空の請求書を作成して会社の資金を騙し取ったり、会社の経費を着服したり、取引先からのキックバックを個人的に受け取ったりするなどが該当します。
業務上の不正行為:データ改ざん、システム不正操作など
業務プロセスやシステムを悪用し、データを改ざんしたり、システムを不正に操作したりすることで、企業に損害を与える行為です。例えば、売上データを改ざんして業績を偽ったり、システムのアクセス権限を不正に取得して機密情報にアクセスしたりすることが挙げられます。
ハラスメント行為:デジタルツールを使った嫌がらせ
職場で発生するハラスメント行為の中でも、メール、SNS、チャットツールなどのデジタルツールを利用して行われる嫌がらせです。これは従業員の精神的苦痛を与えるだけでなく、企業の健全な職場環境を阻害します。
業務中の私的利用:生産性低下と情報セキュリティリスク
業務時間中に、業務とは関係のない個人的なインターネット閲覧、SNS利用、オンラインゲームなどを行う行為です。これにより従業員の生産性が低下するだけでなく、私的利用によってマルウェアに感染したり、企業の機密情報が流出したりする情報セキュリティリスクも高まります。
不正を見抜くための7つの兆候
内部不正は、しばしば特定の兆候を伴います。これらの兆候に早期に気づくことが、不正の拡大を防ぐために重要です。
1.行動の変化に現れるサイン
従業員の行動に以下のような変化が見られる場合、注意が必要です。
- 頻繁な残業や休日出勤が増えるが、具体的な成果が見えない。
- 特定の業務を一人で抱え込み、他者との情報共有を避けるようになる。
- 会社の資産や情報に対する過度な独占欲を示す。
- 金銭的な問題や私生活での急な変化が垣間見える。
- 突然、高価なものを購入するなど、不自然な金遣いが目立つようになる。
2.PCや情報システム上の不審な動き
情報システム上の異常な動きは、不正の兆候である可能性があります。
- 深夜や休日に、通常業務ではアクセスしないシステムにアクセスしている。
- 大量のファイルをダウンロードしたり、外部ストレージにコピーしたりする記録がある。
- システムへのログイン履歴に不審な時間帯やIPアドレスからのアクセスがある。
- 特定のファイルやフォルダの削除、改ざんが頻繁に行われている。
3.経理・会計データ上の異常
経理・会計データに異常が見られる場合は、金銭的な不正が疑われます。
- 説明のつかない支出が増えている。
- 特定の取引先への支払いが増加している。
- 請求書や領収書に不自然な点がある。
- 在庫と帳簿の数値が一致しない。
4.組織内の人間関係の変化
不正を行う従業員は、周囲との人間関係に変化が見られることがあります。
- 特定の同僚や部署との接触を避けたり、逆に過度に親密になったりする。
- 協調性が低下したり、批判に対して過敏に反応したりする。
5.情報管理の不徹底
不正を働こうとする従業員は、自身の行動を隠すために、情報管理を意図的に怠ることがあります。
- 必要な書類のファイリングを怠る。
- データのバックアップを取らない。
- 重要な情報を共有しない。
- 不用意に機密情報を放置したり、席を離れる際にPCをロックしない。
6.業務上のミスや問題の増加
不正行為に手を染めている従業員は、その不正を隠蔽するために余計な作業を抱え込んだり、精神的な負担が増大したりすることがあります。
- 通常業務におけるミスが増える。
- 業務の質が低下する。
- 通常とは異なる業務手順を踏んだり、他者の協力を拒んだりする。
7.離職率の不自然な変化
不正が横行している組織や部署では、特定の従業員の関与後に離職が相次ぐなど、不自然な離職率の変化が見られることがあります。
- 特定の部署や役職での離職率が不自然に高い。
- 特定の人物の関与後に離職が相次ぐ。
参考記事
内部不正の「予防」と「早期発見」のための対策
従業員による情報持ち出しを未然に防ぐ予防策
予防は、内部不正対策の基本です。情報持ち出しを未然に防ぐための具体的な予防策を講じましょう。
アクセス権限の厳格化と管理
従業員が必要最小限のデータにのみアクセスできるよう、アクセス権限を厳格に設定し、定期的に見直すことが重要です。職務に応じてアクセスレベルを細かく設定し、不要なアクセス権限は速やかに削除します。
USBデバイスや個人クラウド利用の制限
USBメモリや外付けHDDなどの外部記憶媒体、およびDropboxやGoogle Driveといった個人クラウドサービスの使用を制限または禁止することで、情報の持ち出しリスクを低減できます。必要に応じて、業務用に承認されたストレージサービスのみ利用を許可するなどの運用ルールを設けます。
情報持ち出しに関する社内規定と罰則の明確化
情報持ち出しに関する明確な社内規定を策定し、従業員に周知徹底することが不可欠です。違反した場合の罰則規定も明確にし、不正行為が発覚した際には厳正に対処する姿勢を示すことで、抑止効果を高めます。
関連記事
低コストで始める効果的な早期発見ツールと仕組み
予防策だけでなく、万が一不正が発生した場合に早期に発見できる仕組みも重要です。
PC操作ログ監視の導入とその有効性
従業員のPC操作ログを監視することは、不正の早期発見に非常に有効です。いつ、誰が、どのようなファイルを操作し、どのアプリケーションを使用したかなどを記録することで、不審な行動や情報持ち出しの兆候を検知できます。専門のツールを活用すれば、低コストで導入できるものもあります。
ファイルアクセス履歴の調査による異常検知
サーバーや共有フォルダへのファイルアクセス履歴を定期的に調査することで、通常では考えられない時間帯や頻度でのアクセス、あるいは不適切なファイルの閲覧・コピーなどを早期に発見できます。異常なアクセスパターンを検知した際には、詳細な調査を行う体制を整えることが重要です。
退職者からの情報漏洩を防ぐ最終対策
退職する従業員からの情報漏洩は、特に注意すべきリスクです。
退職者PCのデータ保全と管理
退職する従業員が使用していたPCは、速やかにデータを保全し、適切に管理する必要があります。業務上重要な情報が含まれている可能性があるため、安易に初期化せず、必要に応じてフォレンジック調査に備える体制を整えましょう。
アカウントの速やかな停止と貸与物の回収
退職日には、社内システムやクラウドサービスのアカウントを速やかに停止し、物理的な貸与物(社用PC、携帯電話、各種カードなど)を確実に回収します。これにより、退職後も不正に情報へアクセスされるリスクを防ぎます。
内部不正が発覚した後の「調査」と「対応」
不正発覚時の冷静な初動対応と証拠保全の重要性
内部不正が発覚した場合、感情的にならず冷静かつ迅速に対応することが、被害を最小限に抑え、後の調査や法的措置を円滑に進める上で極めて重要です。
証拠隠滅を防ぐための緊急措置
不正が疑われる場合、まず第一に証拠隠滅を防ぐための緊急措置を講じる必要があります。具体的には、不正に関わる可能性のあるPCやデバイスのネットワークからの隔離、対象者への接触制限、関連資料の保全などが挙げられます。これらの措置は、証拠が失われることを防ぎ、後の調査を有利に進めるために不可欠です。
デジタル証拠の適切な取り扱い方
デジタル証拠(PCのデータ、メール、ログなど)は、改ざんされやすい性質を持つため、その取り扱いには細心の注意が必要です。証拠としての有効性を保つためには、専門知識を持った者が適切な手順で取得・保全することが求められます。例えば、データのハッシュ値を計算して改ざんがないことを証明したり、時刻情報を正確に記録したりすることが重要です。
隠された真実を明らかにするフォレンジック調査の力
内部不正の全容を解明するためには、専門的なフォレンジック調査が不可欠です。
通常のデータ復元とフォレンジック調査の違い
通常のデータ復元は、誤って削除したファイルを元に戻すことを目的としていますが、フォレンジック調査は、犯罪や不正行為の証拠を発見・解析し、法的に有効な形で保全することを目的としています。フォレンジック調査では、通常の操作では見えない領域のデータや、改ざんされた痕跡なども分析対象となります。
消されたデータや改ざんされたデータの痕跡を追う
従業員が不正の証拠を隠蔽するためにデータを削除したり、改ざんしたりすることは珍しくありません。フォレンジック調査では、削除されたファイルの痕跡、上書きされたデータの旧バージョン、改ざんされたタイムスタンプなど、通常のPC操作では発見できないような情報を専門的な技術で復元・解析し、不正の証拠を明らかにします。
法的措置を視野に入れた証拠収集と活用
不正の事実が明らかになった場合、法的措置を検討することになります。そのためには、法的に有効な証拠を収集し、活用することが重要です。
横領や経費不正の証拠集め
金銭的な不正の場合、銀行取引履歴、経費精算書、領収書、請求書、会計帳簿などが重要な証拠となります。これらの書類の整合性を確認し、不正な金の流れを具体的に示す証拠を収集します。必要であれば、関係者からの聞き取り調査も実施します。
パワハラ・私的利用におけるデジタル証拠の役割
ハラスメントや業務中の私的利用の場合、メール、チャットログ、SNSの投稿履歴、PC操作ログ、ウェブ閲覧履歴などのデジタルデータが有力な証拠となります。これらのデータから、具体的にどのようなハラスメント行為が行われたか、あるいはどの程度の私的利用があったかを客観的に証明できます。
中小企業のための内部不正調査の実践
中小企業が自力でフォレンジック調査を行うことは困難な場合が多いため、専門の調査会社やツールを活用することが現実的な選択肢となります。初動対応での証拠保全の重要性を理解し、必要に応じて外部の専門家と連携する体制を整えておくことが、中小企業にとっての内部不正調査の実践的なアプローチとなります。
IT部門なしでもできる!「EASY Forensics」で内部不正対策を強力にサポート
なぜ中小企業にEASY Forensicsが必要なのか?
中小企業では、IT部門やセキュリティ専門の人材が不足していることが多く、内部不正対策を十分に講じることが難しいのが現状です。
専門知識・人員不足の課題を解決
EASY Forensicsのようなツールは、専門知識やIT人材が不足している中小企業でも、手軽に内部不正対策を始めることを可能にします。直感的な操作性や自動化された機能により、専門家でなくても効果的な調査・監視が行えます。
低コストで導入・運用が可能
高度なフォレンジックツールや専門家による調査は高額になる傾向がありますが、EASY Forensicsは中小企業でも導入しやすい価格設定で提供されており、ランニングコストも抑えられるため、継続的な運用が可能です。
EASY Forensicsの主な機能と活用シーン
EASY Forensicsは、内部不正対策に役立つ様々な機能を備えています。
PC使用状況の定期調査と操作ログ監視
従業員のPC使用状況を定期的に調査し、操作ログを自動で収集・分析します。これにより、不審なアプリケーションの利用、夜間や休日の不自然なPC操作、特定のファイルへのアクセス状況などを可視化し、異常を早期に検知できます。
退職者PCのデータ保全と迅速調査
退職する従業員のPCから、重要なデータを迅速かつ適切に保全し、必要に応じて詳細な調査を行うことができます。これにより、退職者による情報持ち出しのリスクを大幅に低減します。
個人情報ファイルの自動検出
社内にある個人情報ファイル(顧客リスト、社員情報など)を自動で検出し、その保管状況やアクセス状況を把握できます。これにより、個人情報保護法遵守の観点からも、情報漏洩リスクを管理・低減できます。
【PR】Easy Forensics(イージーフォレンジックス)は、内部不正対策に取り組みたいけど詳しい情シス担当者がいなくて予算もあまりない、という中小企業のために開発したツールです。ご興味をお持ちいただいた方は、まずはお気軽に資料をご請求ください。

まとめ:内部不正対策は「継続的な取り組み」と「備え」が鍵
予防、早期発見、迅速な対応の重要性
内部不正対策は、単一の取り組みで完結するものではありません。「予防」「早期発見」「迅速な対応」という3つのフェーズを常に意識し、それぞれに適切な対策を講じることが重要です。不正が発生する前に防ぐ努力をし、万が一発生した場合には早期に発見し、迅速かつ適切に対応することで、被害を最小限に抑えられます。
従業員のセキュリティ意識向上と企業文化の醸成
従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることは、最も効果的な内部不正対策の一つです。定期的なセキュリティ教育や研修を実施し、情報セキュリティに関する社内ルールを周知徹底することで、従業員自身が不正をしない、不正に気づく文化を醸成します。信頼できる企業文化を築くことが、内部不正を根本から防ぐための鍵となります。
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